私には二人の娘がいます。これは今から数十年前の次女の中学校の卒業式のエピソードです。じつは感極まって泣いていたわけじゃないんです。
理由を何度説明してもわかってもらえず、その後何年も「あの卒業式の時の○○さんの泣き方はすごかったわよね」と言われ続けました。
今となっては笑い話ですが、さんざんな卒業式の思い出です。
花粉症を発症した最悪のタイミング
卒業式といえばもちろん春ですが、春は花粉症の季節でもあります。その頃はまだ、花粉症という言葉もメジャーではなく、私も無縁でした。
しかし、なんと次女の卒業式の数日前から急に人生初の花粉症になってしまったのです。目のかゆみ、くしゃみ、鼻水など、当時は天気予報で花粉の飛散予報というのもない時代でしたが、明らかにとても多かったと思います。
当時は市販の花粉症の薬もあまりなく、知人がアレルギー科の病院を紹介してくれましたが、私は働いていたこともあり病院も平日しかやっておらず行くことができませんでした。
結局、卒業式当時はマスクとポケットティッシュを山のようにハンドバッグに詰め込んで参加しました。今のように薄型のマスクではなく分厚いガーゼマスクが主流だったため、人が大勢集まっている卒業式の体育館はとても暑くて途中で外してしまいました。
そして、ここからさらにアクシデントが起きてしまいました。
卒業式でわたしが泣く理由…花粉症なんです!
マスクをしていると暑くて汗をかいてしまうしのぼせるので、外してみたところ、私の場合くしゃみよりも鼻水のほうがひどくまったく止まらなくなってしまいました。
ハンドバッグからティッシュを取り出し、鼻をかもうとしましたが思った以上に静かで鼻をかむ音が響いてしまいます。仕方なくハンカチで鼻を抑えてすすっていましたが、花粉症の方はまだ多くはいなかっため、どうやら周りの父母の方々は私が泣いていると勘違いしたようです。
舞台の上では、まだPTA会長のあいさつや、校長先生の話など到底泣くような場面ではありませんでしたが、私の隣にいた娘の同級生のお母さんが
「あら、○○さん大丈夫?やっと卒業で感極まるわよね、わかるわ」と私の耳元でささやくように言いました。「違うのよ、花粉症でね」と慌てて訂正するも、完全に勘違いした。その同級生のお母さんは、私の鼻をすする音につられたのが目頭を押さえて泣き出してしまいました。
どうしようもないので、そのまま黙っていましたが、私の鼻は止まらず、さすがに卒業生のあいさつや歌の場面で私も目が潤んできましたが、泣いてしまうとさらに鼻水がでてしまうので絶対に泣くわけにはいきません。
ハンドバッグのティッシュも足りなくなってしまうので、ただひたすら式の間中、花粉症と戦っていました。
卒業式が終わってもまだ勘違いは続く
卒業生が順番に並んで体育館を退場し、式は終わりましたが、私はもはや花粉症がすごすぎて目は充血してうるみ、鼻はかみすぎて真っ赤になるもまだ止まらず、ハンカチで顔を押さえたまま離せませんでした。
式の後は娘や娘の同級生、同級生の父母の方々と校門の前で写真をとりましたが、みんな口々に「○○さんのお母さんは泣き虫ね。こんなに顔をぐしゃぐしゃにしちゃって」と笑っています。
私の顔がぐしゃぐしゃなのは花粉症なのであって、一度も涙は流していないのですが、完全に「ものすごく泣き虫な人」ということになってしまいました。
唯一、事情を知っている娘は苦笑いをしていましたが、それから何年間も、娘の友人のお母さんたちに会うたびに「あの卒業式の時の○○さんの泣き方はすごかったわよね」と言われていました。
なにせ公立の中学校だったために皆近所だったのです。何度言ってもわかってもらえないので、あきらめてしまいましたが散々な卒業式の思い出となっています。
さいごに
最近は花粉症の人もとても増えていて、鼻をすすっていると「花粉症ですか」と言われることも普通になっています。
でも泣き虫と思われるくらい涙と鼻水がひどいなら、しっかり薬を飲んだりなど対策をすることを絶対に忘れない方が良いですよ。