浴衣は、夏の暑さのなかでも日本の女性の凛とした佇まいを見せる、素敵なアイテムですね。最近では伝統にとらわれない着こなしの提案も多く、斬新でチャーミングな装いも増えています。
しかし、それは概ね20代くらいまでを想定しているようで、30代以降になると、同様のものを選んでもなかなかマッチしない、というところがお悩みどころではないでしょうか。
浴衣は30代では選び方が違うことに気が付こう
私は現在50歳の主婦です。長い間浴衣を着ることなく過ごしてきましたが、数年前に夫が秋田に転勤になり単身赴任したことをきっかけに、夏には竿灯まつりを見に行くようになりました。
街をあげての大きなお祭りで、沢山の浴衣を着て歩く人を見て羨ましくなり、翌年のお祭りに備えていろいろ調べ始めたのです。春先からデパートなどに売り場が設けられるようになっているので、いくつか覗いてみたり、ネットで調べたり。
値段もピンキリでしたが、やはりそこそこのお値段のものを見てしまうと、その生地の質とデザインに惹かれてしまい、どうせ買うなら、とふんぱつするつもりでした。
しかし、何枚も見ているうちに、自分が良いなと思ったものを当ててみてもピンとこないのです。いずれも好きな色や柄でしたが、帯と浴衣の組み合わせは素敵なのに、試着すると「あれ?」となるのです。
暫く悩んでから、着付けを生業にしていた友人に相談してみたら、ずばりと言われました。「洋服の感覚で選んでもしっくりこないよ」と。
また「浴衣はどうしても若いころに着ていたものの好みを引きずってる傾向があるから、すっぱり忘れてうんと渋めなのやシンプルな方が今の肌の色になじむの」ということでした。
浴衣を着付けの元プロに選んでもらったら…さすがっ!
着付けを生業にしていた友人曰く
30代になると肌や髪の艶は変わってくるし、それは悪いことじゃない。でも「まだ若い」と思ってビビットな色使いや大きな柄のものを選んでみてもしっくりこなくなってる可能性がたかい。
それは理屈で解明されるわけじゃないけど、40代ならなおのことで、鮮やかな色を使いたければ半幅の帯や飾り襟を入れてさし色のように使ったらいいよ
というのです。逆に
若い子は派手でもかわいくても渋くても、何でも似合うのが特権なんだけどね
とのこと。
そんな彼女が私に「これなら似合うんじゃないかな」と選んでくれたのは、昔ながらの藍色の浴衣でした。試着してみると自分で選んでいたものとは違うのがよくわかりました。
柄は入っていても、全体のバランスが絶妙でした。顔回りは柄が少なくてスッキリしており、袖や背中、裾に花柄が流れるように入っていました。
もう一着は渋めのグリーンの太いストライプでした。縦の、洋服でいうところのIラインがスッキリとしていて、全体に細見えするということでした。
「プロが見立てるとこんな感じになるのか!」と驚き、また、それが予想外に自分に似合うのが嬉しくなって、恐らく自分では絶対に選ばなかっただろう緑の浴衣を選び、それに合わせた小物を友人と店員さんに揃えてもらいました。
ストライプの柄はグリーンの濃淡でしたが、後に、お祭りに実際着て行って、夜の街頭や提灯の明かりの下でも良く映えて、似合うと言ってもらえたのが嬉しかったです。
大人が浴衣を粋に着こなすためのアドバイス
そんな浴衣を選んで、最後にアドバイスされたのが「髪はタイトにまとめて、できるだけ襟足を見せるのが良いよ」ということでした。アクセサリーは指輪とピアスのみで、髪飾りもシンプルにまとめた方が浴衣をきれいに見せられる、ということです。
やはり、浴衣の時には自分と同じくらい浴衣を見てもらう努力をすべきであって、しかし若いころのような強い主張ではなく、シックにまとめてこそのオシャレだ、というのです。
当時はボブだったので、ワックスでなでつけて襟足で縛って、まとめ、メイクも汗で流れないように念入りにベースの肌を作りました。
浴衣を着てのお出かけはやはり非日常のことなので、いつもの適当なメイクではなく、しかし過剰にならない和装メイクを練習し、楽しみました。
さいごに
年齢を重ねることで肌も髪も変わる、それは衰えや喪失といったイメージがあるかもしれませんが、自然の成り行きであって、理屈ではないのです。
しかし、それを受け入れて装い方も変えていくことで、違った自分の姿に出会える、というのは新鮮な経験でした。
その時に選んでもらった浴衣は今でも大切に着ていますが、帯や小物は少しずつ変えて、アレンジしています。いろいろなターニングポイントを迎える30代、粋なお姉さんを目指してみませんか?
きっと素敵な一着がみつかるはずですよ。