着物好きが高じて着物屋に就職しました。お店に立っているとたくさんのご質問を頂きますが、結構多いのがこちら。
「着物のお手入れどうしたら良い?」
基本的には専門の悉皆屋さんに出されることをオススメしますが、先日「どうしてもお家で洗いたい!」という方に遭遇しました。
なんでもネットオークションでとてもお安く帯を落札されたとか。
届いてわくわく、開いてみると…悲しいことに全体に薄汚れ、ニオイも気になる。
デザインは気に入っているものの、あまりに安くで落とされたので、お手入れ代を出すのも悔しい、というわけです。お気持ちはとても分かります。
さて、そんな場合自力でなんとかお手入れすることはできるのでしょうか?
自力でのお手入れの簡単な方法!
まず始めに、脅かして申し訳ないのですが…。
帯はどんな素材であっても自宅でお手入れするのはリスクが伴います。ですので「どうなっても良い!」という覚悟だけは先にお持ちください。
その上で、とても簡単な方法をご紹介。
それは…コインランドリーでドライクリーニングです。
「え、そんなのあるの!?」
びっくりされた方もいらっしゃるかもしれません。うちの近くは普通にあるので何とも思いませんでしたが、お近くにありますか?
帯の素材は正絹と言われるシルクが多いです。そして仕立て方によっては中に綿素材の帯芯が入っていることも。
正絹は水に弱く少し濡れただけでも縮む可能性が高く、中の帯芯との収縮率が違うために、自己判断で水で洗ってしまうと使い物にならないくらいヨレヨレになることがあります。
その点ドライクリーニングなら水を使わないので、その心配はありません。
ただ、店によっては着物を断っているところもありますし(そんな時は係りの人がいない時に行っちゃいましょう)、溶剤で色落ちすることもあります(事前に見えない部分をベンジンでたたいてみると、色落ちするかどうかある程度判断できます)。
ですので、まずは単体洗いでグルグルまわしてみると良いでしょう。
何度も言うようですが、「どうなっても良い!」子だけにして下さいね。
丁寧に洗う方法としては、一度解いて、帯地と帯芯を別にして、それぞれ水で洗ってアイロンでプレスすることで縮みを直す、という方法もありますが、かなり、大変です。
安価なもので「どうなっても良い!(三度目)」のであれば、ドライクリーニングを試してみることをオススメします。
気に入ったものはどのようにお手入れすれば良い?
さて別のシチュエーションとして、気に入っているものを洗いに出したいとき、または全体汚れだけでなく、一部のシミが気になるときは自分でのお手入れはやめておきましょう。
専門のシミ抜き屋さんに出す事をオススメしますが、その中でも色々種類があります。
まずは丸洗い。
語弊を恐れず言うならばプロのドライクリーニングのようなもの。ですので全体的にキレイにはなりますが、シミは取れません。
続いてシミ抜き。
はその名の通り、一部のシミを取ってくれます。何でついた汚れなのかによって、抜き方がまったく違ってきますので、出されるときは説明されるとより確実です。
最後は汗抜き。
汗をかいたときに汗の成分を抜くものですので、夏場に汗をかいたときなどは早めに出されるとその後汗シミにならずに済みます。
状況によって使い分けたり、組み合わせたりしてください。
小さなシミや汚れならベンジンという溶剤で自分でお手入れをする場合もありますが、これも生地によっては色落ちしたり余計にシミが広がったりする可能性があります。
残布や見えない部分で試してから挑戦してくださいね。
または最近は着物であれば、洗える着物などもありますので、手軽に着たい方にはそんな選択肢もあります。
さいごに
やはり着物はお手入れの面倒さというものがありますので、自分でドライクリーニングをしてキレイにできるのであれば、着物のハードルは随分下がりますね。
ただ、本当に「どうなっても良い!(四度目)」子でまずは試して下さい。
また、一度成功しても、それぞれ仕立てや生地によって影響は違ってきますので、あまり流用されない方が良いかと思います。
着物は畳み方、着方、お手入れとやはり洋服よりも手間がかかりますが、個人的には手間暇をかけることで愛着もより湧くように思います。
気に入ったものは汚さないよう大事に着て、汚れたら専門店に相談する、というのが着物も喜ぶのではないのかしらと私のような古い頭では思ってしまう部分もあるのですが…。
でもきっと、楽しみ方もいつくしみ方もいろいろで、手軽に着たりお手入れできたりすることも、同じように大事なことなのでしょうね。