私の務める運送会社は総勢20名前後の小さな営業所で、コミュニケーションの取りやすい職場です。
会社は基本的にお盆休業や年末年始休業といったものはないので、社員はそれぞれ時期をズラして4~5日程度の休暇を取ることになっていました。
私は2月に遅めの正月休暇を取って埼玉の実家へ帰省するのですが、あるとき実家の母が「職場の人にも持っていったら?」と言い出すのです。
それは、私にとって「お金を出して買うほどのものではない」と、あまり価値の見いだせない物です。
余らせて捨てるだけと思われていたものでも、職場の人たちにとって大変喜ばれたソレとは…。
実家には大きな柚子(ゆず)の木が5本あり、2年に1回大量の柚子が採れます。
柚子風呂にしたり近所にも配っているのですが、全部を収穫することは出来ず、半分以上は腐って地面に落ちてしまいます。
柚子は子供の頃から冬になると大量に家にあったので、私の中で「柚子をお金を出して買う」という感覚がありませんでした。
しかし、スーパーなどに行くと1個あたり100円前後で売られており「え~!ウチで腐るほど採れるのに」と子供心にビックリしたのを覚えています。
現在でもその感じは残っており「柚子なんか持って行って喜ばれるのかな」と少し不安でした。
とはいえ、腐らせてしまうくらいならと思い、ダンボールに詰めて帰省のお土産として会社へ持っていくことにしました。
重さ約10キロのダンボールを抱え、5日ぶりに会社へ出勤です。
「これ実家で採れた柚子なんですけど、良かったら持って行ってください」
すると社員一同が予想外に喜んでくれて「めっちゃいい匂い~」と匂いを嗅ぐ人もいました。
たしかにこの量を買うとしたら1万円以上はするのですが、予想以上のウケの良さに「これだったら毎回持ってくれば良かったな」と少し後悔。
ちなみに営業所の所長は柚子をスーパーで買っているとのことですが、鍋に入れるのが主で「柚子風呂になんか勿体なくて使えなかったんだよ、マジ嬉しいわ~」と本気で喜んでいました。
私は子供の頃から柚子風呂は何百回と入っており、効率よく柚子を消費できる程度にしか思っていません。なので所長の反応は、これまた意外でした。
100個近い柚子はその日のうちに1個残らず持って行ってくれました。しかし実家にはまだまだ1000個以上は木に付いています。
その日休みだった社員も何名かいたので、母に連絡して柚子を送ってもらうことにしました。
柚子の木には五寸釘のような危険なトゲがあるので、収穫は結構面倒臭いんです。でも母も柚子が職場でウケたことが嬉しかったようで、大急ぎで収穫して送ってくれました。
送ってくれた分もみんな喜んで持ち帰ってくれ「来年も頼むよ!」と言われたのですが、柚子が採れるの2年に1回。
そこで「タケノコなら毎年持って来れますけど」と言ってみたら「タケノコめっちゃいいじゃん!タケノコ持ってきてよ絶対!」これまた良い反応なのです。
このときばかりは、色んなものが採れる家に生まれて良かったなと、しみじみ思いました。
さいごに
生まれた頃から身近にあるものは、それが当たり前になってありがたみを感じないものですが、他から見ると良いものだったりします。
まさか柚子やタケノコで喜ばれるなんて思いもしませんでした。肉体労働系の職場では疲労回復に柚子風呂が喜ばれるのというのもあったのでしょう。
タダで採れたものなら会社の人も気を使わなくていいと思いますし、お土産屋で買ってくる銘菓より目新しくて良いのかもしれません。
これまで捨てるほどあるけど価値が無いと思っていたものがあれば、お土産として持って行ってはいかがでしょうか。もしかすると、お土産代が浮いた上に予想以上に喜んでくれるかもしれませんよ。